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2009/10/13

FEST-Swingを利用する(5) EDTで発生した例外をJUnitで検知する

前回で実際のソースコードを用いた例が終了してしまい、NetBeansもあまり関係なくなったのでタイトルを変更した。

EDTで例外が発生すると、Swingのデフォルト動作では、エラー出力にトレースを出力し、EDTを再起動させるようになっているようだ。

アプリケーションを稼動させている場合だと、自動で復旧してくれるこの動作は、有難い状況が多い。しかし、ユニットテスト中はエラーが発生したことを検知できず問題の発見が遅れる場合がある。ここでは、デフォルト動作を変更し、JUnit実行時にEDTで例外が発生した場合でもJUnit上でテスト失敗として出力する方法を述べる。

今回のサンプルはこちら

 

JUnitスレッドで実行されるメソッドで発生する例外

public class MyClass {

    public void myMethod() {
        throw new UnsupportedOperationException("未実装");
    }
}

上記のようなクラスに対して、下記のJUnitテストケースを作成する。

public class MyClassTest {

    @Test
    public void testMyMethod() {
        new MyClass().myMethod();
    }
}

このテストケースを実行すると、myMethodメソッドで例外が発生するため、JUnitでは想定どおり失敗とみなされる。

 

EDTで実行されるメソッドで発生する例外

次に、EDTで例外を発生させてみる。ボタンの押下イベントハンドラbuttonActionPerformedで例外を発生させるコードを記述する。

public class MyFrame extends javax.swing.JFrame {
...
    private void initComponents() {
...
        button.addActionListener(new java.awt.event.ActionListener() {
            public void actionPerformed(java.awt.event.ActionEvent evt) {
                buttonActionPerformed(evt);
            }
        });
...
    }

    private void buttonActionPerformed(java.awt.event.ActionEvent evt) {                                       
        throw new UnsupportedOperationException("未実装");
    }
...
}

これに対するJUnitテストケースを作成する。

public class MyFrameTest {
...
    @Test
    public void testOkButton() throws Throwable {
        frame.button().click();
    }
}

このテストケースを実行すると、Exception in thread "AWT-EventQueue-0"から成るスタックトレースが標準エラー出力に表示されるが、テストケース自体は正常で完了する。つまり、JUnitの結果を見ただけでは、コードに問題がないのかどうか判断できないということになる。

 

問題点の解消その1 異なるスレッドで発生した例外を取得する

JUnitスレッドとイベントディスパッチスレッド(EDT)は異なるスレッドであるため、try-catchではもちろん捕捉できない。今回は静的変数edtThrowableを用いてEDTで発生した例外をJUnitスレッドに受け渡すことにした。

public class MyFrameTest {
    private static Throwable edtThrowable;
...
    @Before
    public void setUp() {
        edtThrowable = null;
...
    }

    @Test
    public void testOkButton()  {
        frame.button().click();
        Thread.yield();
        if (edtThrowable != null) {
            throw new RuntimeException(edtThrowable);
        }
    }
...
}

テストケースの最後にedtThrowableに値がセットされているか確認し、セットされていればそれをJUnitスレッドで送出することで、JUnitテストケースを失敗させる。

次に、EDTで例外が発生した際に、この変数に例外情報をセットするコードを記述する。

 

問題点の解消その2 EDT例外時動作を変更する

EDTで例外が発生した状況をデバッガで追っていくと、EventDispatchThread.javaのhandleExceptionメソッドに以下のようなコメントが見つかる。

Handles an exception thrown in the event-dispatch thread.

If the system property "sun.awt.exception.handler" is defined, then when this method is invoked it will attempt to do the following:

  1. Load the class named by the value of that property, using the current thread's context class loader,
  2. Instantiate that class using its zero-argument constructor,
  3. Find the resulting handler object's public void handle method, which should take a single argument of type Throwable, and
  4. Invoke the handler's handle method, passing it the thrown argument that was passed to this method.

これに沿ったクラスEDTExceptionHandlerを作成し、@BeforeClassでハンドラの設定を行う。このクラスのhandleメソッドで、前述の静的変数edtThrowableに設定を行っている。

public class MyFrameTest {
    public static class EDTExceptionHandler {

        public void handle(Throwable ex) throws Throwable {
            edtThrowable = ex;
            throw ex;
        }
    }

    @BeforeClass
    public static void setUpClass() throws Exception {
        System.setProperty("sun.awt.exception.handler", EDTExceptionHandler.class.getName());
    }

    @AfterClass
    public static void tearDownClass() throws Exception {
        System.setProperty("sun.awt.exception.handler", "");
    }
...
}

 

改良したテストケースの実行

上記で作成したテストケースを実行すると、JUnitは想定どおり失敗を通知する。

 

補足

  • 上記はコードを単純化するために、マルチスレッドプログラミングについてはあまり考慮していない。JUnitスレッド側で実行しているThread.yieldで確実にEDTが実行されるとは限らず、また、edtThrowableへは両スレッドがアクセスするため同期化が必要だろう。
  • 実際に私がコーディングしていた際には、前準備や後処理は抽象クラスにまとめ、それを継承した具象テストクラスを作成していた。ただ、この方法をとると、NetBeansが自動で実行してくれるテストでは、抽象クラスも実行しようとしてしまい、テストメソッドがないと怒られるようだ。

 

参考

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» FEST-Swingを利用する(7) EDTで発生した例外をJUnitで検知するの追補 [雪羽の発火後忘失]
EDTで発生した例外のハンドラをカスタム化するにはsun.awt.exception.handlerプロパティを使用する、と以前記載した。 先日リリースされたFEST-Swing 1.2a4では、カスタム化するためのクラスAWTExceptionHandlerInstallerが用意されたようだ。こちらを使用する方が良いかもしれない。ただし、実装上は、内部で上記プロパティを利用しているので差異は無... [続きを読む]

» FEST-Swingを利用する(8) 視覚の威力 [雪羽の発火後忘失]
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