FEST-Swingを利用する(5) EDTで発生した例外をJUnitで検知する
前回で実際のソースコードを用いた例が終了してしまい、NetBeansもあまり関係なくなったのでタイトルを変更した。
EDTで例外が発生すると、Swingのデフォルト動作では、エラー出力にトレースを出力し、EDTを再起動させるようになっているようだ。
アプリケーションを稼動させている場合だと、自動で復旧してくれるこの動作は、有難い状況が多い。しかし、ユニットテスト中はエラーが発生したことを検知できず問題の発見が遅れる場合がある。ここでは、デフォルト動作を変更し、JUnit実行時にEDTで例外が発生した場合でもJUnit上でテスト失敗として出力する方法を述べる。
今回のサンプルはこちら。
JUnitスレッドで実行されるメソッドで発生する例外
public class MyClass { public void myMethod() { throw new UnsupportedOperationException("未実装"); } }
上記のようなクラスに対して、下記のJUnitテストケースを作成する。
public class MyClassTest { @Test public void testMyMethod() { new MyClass().myMethod(); } }
このテストケースを実行すると、myMethodメソッドで例外が発生するため、JUnitでは想定どおり失敗とみなされる。
EDTで実行されるメソッドで発生する例外
次に、EDTで例外を発生させてみる。ボタンの押下イベントハンドラbuttonActionPerformedで例外を発生させるコードを記述する。
public class MyFrame extends javax.swing.JFrame { ... private void initComponents() { ... button.addActionListener(new java.awt.event.ActionListener() { public void actionPerformed(java.awt.event.ActionEvent evt) { buttonActionPerformed(evt); } }); ... } private void buttonActionPerformed(java.awt.event.ActionEvent evt) { throw new UnsupportedOperationException("未実装"); } ... }
これに対するJUnitテストケースを作成する。
public class MyFrameTest { ... @Test public void testOkButton() throws Throwable { frame.button().click(); } }
このテストケースを実行すると、Exception in thread "AWT-EventQueue-0"から成るスタックトレースが標準エラー出力に表示されるが、テストケース自体は正常で完了する。つまり、JUnitの結果を見ただけでは、コードに問題がないのかどうか判断できないということになる。
問題点の解消その1 異なるスレッドで発生した例外を取得する
JUnitスレッドとイベントディスパッチスレッド(EDT)は異なるスレッドであるため、try-catchではもちろん捕捉できない。今回は静的変数edtThrowableを用いてEDTで発生した例外をJUnitスレッドに受け渡すことにした。
public class MyFrameTest { private static Throwable edtThrowable; ... @Before public void setUp() { edtThrowable = null; ... } @Test public void testOkButton() { frame.button().click(); Thread.yield(); if (edtThrowable != null) { throw new RuntimeException(edtThrowable); } } ... }
テストケースの最後にedtThrowableに値がセットされているか確認し、セットされていればそれをJUnitスレッドで送出することで、JUnitテストケースを失敗させる。
次に、EDTで例外が発生した際に、この変数に例外情報をセットするコードを記述する。
問題点の解消その2 EDT例外時動作を変更する
EDTで例外が発生した状況をデバッガで追っていくと、EventDispatchThread.javaのhandleExceptionメソッドに以下のようなコメントが見つかる。
Handles an exception thrown in the event-dispatch thread.
If the system property "sun.awt.exception.handler" is defined, then when this method is invoked it will attempt to do the following:
- Load the class named by the value of that property, using the current thread's context class loader,
- Instantiate that class using its zero-argument constructor,
- Find the resulting handler object's public void handle method, which should take a single argument of type Throwable, and
- Invoke the handler's handle method, passing it the thrown argument that was passed to this method.
これに沿ったクラスEDTExceptionHandlerを作成し、@BeforeClassでハンドラの設定を行う。このクラスのhandleメソッドで、前述の静的変数edtThrowableに設定を行っている。
public class MyFrameTest { public static class EDTExceptionHandler { public void handle(Throwable ex) throws Throwable { edtThrowable = ex; throw ex; } } @BeforeClass public static void setUpClass() throws Exception { System.setProperty("sun.awt.exception.handler", EDTExceptionHandler.class.getName()); } @AfterClass public static void tearDownClass() throws Exception { System.setProperty("sun.awt.exception.handler", ""); } ... }
改良したテストケースの実行
上記で作成したテストケースを実行すると、JUnitは想定どおり失敗を通知する。
補足
- 上記はコードを単純化するために、マルチスレッドプログラミングについてはあまり考慮していない。JUnitスレッド側で実行しているThread.yieldで確実にEDTが実行されるとは限らず、また、edtThrowableへは両スレッドがアクセスするため同期化が必要だろう。
- 実際に私がコーディングしていた際には、前準備や後処理は抽象クラスにまとめ、それを継承した具象テストクラスを作成していた。ただ、この方法をとると、NetBeansが自動で実行してくれるテストでは、抽象クラスも実行しようとしてしまい、テストメソッドがないと怒られるようだ。
参考
- AWT/Swing でエラーダイアログを表示する。(Sunの実装限定) - おいしい大麻味噌の熟成日記
ThreadGroup.uncaughtExceptionを利用する場合のリンクあり。
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