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2011/05/05

[読書]プログラマが知るべき97のこと その1 『19:誰にとっての「利便性」か』

 

本書プログラマが知るべき97のことを読み進めているといくつか過去の経験から言いたいことが出てきたので、これはメモ取りながら読んだ方が良いな、と思っていたのですが、そんな環境で本を読む時間がほとんどないことに気付きました(普段読書するのは吊革につかまりながら、なのです)。

また、途中まで書いたメモを読み返すと、結構背景補足を行わないといけないことに気付き、これは私がこの本のようにエッセイを書くのと変わらないな、と挫折しました。

そんなわけで「その1」と銘打ってはいますが(いつもの通り)続編があるかどうかは分かりません…

ちなみに、本書に収録されているエッセイは、CC-by-3.0-USによってライセンスされているそうで、オライリーのサイトで原文を閲覧できます(日本語版では日本の方が書かれた10本のエッセイが追加収録されていますので、本書の全てのエッセイが、というはけではないです)。日本語訳については一部のようですがWikisourceで読めます

 

本章『誰にとっての「利便性」か』では、作る側の利便性よりも使う側の利便性を考えてAPIを設計しましょう、という内容が書かれています。詳細は他の方がすでに書かれていますのでそちらを参照するのが良いでしょう。

そして、以下のような具体例が挙がっています。

たとえば、 walk(true) というようなコードを書かされるよりは、単に run と書ける方が間違いなく使いやすいでしょう。walkとrunは本質的には同じ動作で、ただスピードが違うだけとみなすこともできるのですが、言葉が2つある方が使う側にとっては便利なのです。

私は、著者の主張『作る側の利便性よりも使う側の利便性を考えてAPIを設計しましょう』というのには賛成ですが、walkとrunの例には賛同できません。ただスピードが違うだけなのであれば、ただスピードが違うだけなのだと使用者に伝えるべきで、それを最も明示できる方法の一つがメソッドシグニチャによる表明だと考えます。

今回の例ではwalkとrunの2種しか登場ませんが、これより種類が多い、あるいは種類が多くなる可能性があることを考えてみましょう。おそらく日本の列車種別のように特急、準急、快速ってあるけど結局どれが速いの?ということになるでしょうし、動く(walk/run)以外のAPIも同じように並んでいるとメソッド名を見ただけでは判断がつかなくなると思います。これは使う側の利便性も低下していることになるでしょう。

この例で、私が採ると思われる策は、速さをenumの引数で表すことです。つまり move(Speed speed) のような形になります(Speedがenum)。

  • runとwalkという文字列で表したいのであれば、そのようにSpeedを定義すれば良い。
  • 速さの種類が増えてもインタフェースの互換性は失われない。また、前述の列車種別のような例でもenumの定義順から速さの順番は推測できる。
  • Javaではenumでストラテジパターンも実現可能であり、設計に幅ができる。

(JavaのEnum詳細については書籍Effective Java 第2版 「項目30 int定数の代わりにenumを使用する」を参照してみてください。)

…もしかすると、著者と私で想定している背景が異なっているため、上のような結論の差異が出ているのかもしれません。実際に設計する際には「あの本に載っていたから」を理由にするのではなく、前提条件がその本と一致しているか、自分の問題にも適用するのが最適なのか、などといったことも考慮する必要がある、というのを覚えておくべきでしょう。

 

最後に。本書は「(比較的著名な)プログラマ97人がが考えている、知っておくべきこと集」であって、「プログラマが知るべきことのうちBEST97」ではないことに留意しましょう。もし今年SEになったばかりの人に何か良い本は無いかと尋ねられた場合、おそらく私が本書を勧めることは無いと思います。本書が悪書である、と言いたいわけではなく、新人SEが本書より先に読むべきものは他に沢山ある、ということです(個人的には、本書はファンブックに分類されるものだと考えます)。

(補足: 便宜上プログラマ97人と書きましたが、実際には1人の方が複数のエッセイを書かれていますので正確には73人です(前述したとおり日本語版では+8名)。)

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